先日発表いたしました第18回角川ビーンズ小説大賞受賞者3名の受賞のコメントと、最終候補5作品の選評を公開いたします。
ご応募くださいました方々、選考にあたられた諸氏に改めて御礼申し上げます。

<奨励賞&読者賞>

「世界で一番甘い毒」 たちばな立花


【あらすじ】
15歳のある夜、ライラの世界は壊された。村は焼かれ、兄はライラをかばって死んでしまう。そしてライラに知らされたのは、犯人の名前――竜人“ルガー”。彼は種族の違いを超えてライラが慕う初恋の人だった。
復讐を誓うライラは、竜人が本能で求める花嫁『番』になりすましてルガーの居城へ潜入し、毒を盛ることを決意する。しかしその毒は、100日間、口づけで与え続けなくてはならないもの。ルガーから向けられる愛情に偽の『番』であるライラの心は揺れ動くが……。過去が引き裂いた恋心が選ぶ道は果たして!? 運命のラブ・ファンタジー!

【受賞コメント】
このたびは、奨励賞と読者賞という素晴らしい賞をいただき、誠にありがとうございます。
読者審査員の皆様、編集部の皆様、並びに賞に携わられた全ての方々に心から感謝いたします。
沢山の想いを込めて書いた作品が評価いただけたこと、この作品と共にスタート地点に立てること、大変嬉しく思います。
これからは、今まで以上に作品に向き合い、皆様の心にとけていくような世界をお届けできるように精進してまいります。

<奨励賞>

「死に挑むワルキューレ」 青川志帆


【あらすじ】
レンマール王国に住む少女ソフィーは、病気の弟を助けるため後先考えずワルキューレの募集に応じてしまう。しかし、その実態は隣国との戦争で兵士と共に戦う役目を与えられた危険な職業だった! 魔術で体を作り替えられ、戦場に赴くソフィー。そこで出会った将軍・イェンスにだんだん惹かれていくが、敵軍のある動きを目撃したことがきっかけで流れが変わりはじめて……?
「お前は、死なせない」。死と背中合わせの緊張感のなか、生き残りをかけた戦いが今始まる!

【受賞コメント】
このたびは奨励賞という素晴らしい賞を賜り、ありがとうございます。
本作「死に挑むワルキューレ」を思いついた時、「これは力のある物語かもしれない」と漠然と感じました。その直感は正しかったのか、ずっと「作家になりたい」と思っていた私をここまで連れてきてくれました。この小説がデビュー作になることが嬉しくてたまりません。選考に関わってくださった皆様、編集部の皆様、読者審査員の皆様に感謝いたします。まだまだ未熟者ですので、研鑽を怠らずに物語を書いていきたいと思います。よろしくお願いします。

<奨励賞>

「春姫薬書」 伊月ともや


【あらすじ】
一条大納言家の姫君である小春は、女医博士だった母に憧れ医師を夢見る。ある日、母の弟子だった雪路の計らいで典薬寮に出仕できることに。人目を忍んで通うのにも慣れてきた頃、小春は雪路から母の秘密を聞かされる。それは、亡き母が呪術を扱う医師、呪禁師だったという事実と、呪禁の使い過ぎにより命を落としたこと。そして、その力を受け継いだ自分。戸惑う小春に、雪路はその力を決して使わないようにと告げる。悶々とした日々を送る小春だが、参内していることが父・頼政にばれてしまい……?
自分の生き方は自分で決める。全てを捨て医師を志す姫君の平安医術絵巻!

【受賞コメント】
この度は奨励賞という素晴らしい賞を頂き、誠にありがとうございます。
選考に携わられた編集部の皆様、読者審査員の皆様、そしてこの作品を作るにあたり、私を支えて下さった方々に心からお礼申し上げます。ずっと憧れていた夢に一歩、前進したことをとても嬉しく思っています。諦めずに楽しく、そして自分らしく書き続けることが出来たのも、夢を叶えたいという一心からでした。これからも初心を忘れずに、誰かの心を揺らすことが出来るような作品を作っていきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。

選評
【総評】

昨年は小説投稿サイト「カクヨム」からの応募受付を開始したが、今年はさらに応募窓口として小説投稿サイト「魔法のiらんど」が加わり、現代・ファンタジージャンルを問わず、非常に多種多様な作品が集まった。最終選考に残った5作品は、ジャンルという枠組みを越え、書きたいものを全力で書き切ろうとするチャレンジ精神に溢れていた。一方で、その熱意に対し「誰に読ませたいのか」という、作品を俯瞰する視点が足りない面もあり、アンバランスさが目立った。その中でも受賞作品は、書きたいものを主軸に据え、作品の世界を大きく広げて楽しませようとする意欲があり、新人賞にふさわしいエンタテインメント小説の片鱗を感じさせてくれた。

「死に挑むワルキューレ」

弟を助けるために戦場で戦うワルキューレとなった少女と、彼女のパートナーになった将軍の関係性がドラマティックな作品。取り扱いの難しいテーマをバランスよく盛り込み、最後まで緊張感を失わずに読み込ませる力があった。ただ、感情を失ってしまったヒロインが成長していく姿と、戦況の変化が上手くリンクしている一方で、設定の矛盾、世界観の詰めの甘さが随所で目立ってしまったことは否めない。ヒロイン自身の問題解決能力が高いため、葛藤以前にヒーローが介入する余地が少なくなってしまったところも大きな改善点。物語として必要なテーマを組み合わせた時に、最大限盛り上げるべきポイントを明確にした上で、そこに至るまでのステップを工夫する必要がある。

「春姫薬書」

男だらけの典薬寮で、身分を隠して医師を目指すヒロインの成長物語。昨年も最終選考に残った筆力の高さで、平安時代の雅な世界と繊細な心情を巧みに描いた。前回指摘された「物語に起伏や緩急をつける」点も向上しており、作品作りへの意欲が明確に伝わってくる。だが、主題に据えた「主人公の成長」を意識しすぎるあまり、周囲のキャラクターが弱くなり、アンバランスさが際立ってしまった。ヒーローがストーリーラインに絡みきれていない点にも弱さが出ており、結果として緩急をつけたはずが単調になっている。平安という時代だからこそ求められる“王道”と、自分だからこそ表現できる“オリジナリティ”のバランスを意識して、物語に登場する要素を見直すことが課題となる。

「世界で一番甘い毒」

復讐のため、偽の『番』となることを選んだ少女と、彼女の初恋の相手であり竜人であるヒーローのラブ・ファンタジー。ファンタジー世界とキャラクター描写では頭一つ抜けていた作品。読ませたい恋愛のポイントが明確であり、繰り返されるキスの設定と組み合わさって、面白さを感じさせてくれた。しかし、その他のストーリー回収に必要な要素がすべて後半に集まってしまっていたり、冒頭で大事だと思わせた設定の回収ができていなかったりと、読者に唐突感を与えてしまった。せっかく作り上げた盛り上がりから醒めさせてしまっては本末転倒。キャラクターの生きる道筋を整理し、彼らの感情の流れと共に、伏線としてどう繋ぐかを見直してほしい。

「アクイレギアの心臓」

心臓をなくした魔女と、美しさのために成人したら死ぬことが決まっている王子のラブ・ファンタジー。「美しいことが罪である」というおとぎ話のような導入と、ヒロインとヒーローの生き生きとした、テンポのよいやりとりに惹きつけられる。世界観のみならずキャラクターそれぞれに掘り下げられた過去、そこから生まれた感情が鮮やかに表現されていた点にも評価が集まった。一方で物語の前半と後半で主軸がぶれてしまい、結果として作り込みすぎた設定に振り回されてしまっている印象。エピソードの種類が多く、主題が都度変わってしまったことも要因と思われる。物語の到着点はどこか、何が主軸で何が枝葉となるのか、作品を通した流れを整理してみてほしい。

「この手に剣を、その手に誓いを」

初恋の姫の面影を追い続ける王子が、花嫁探しのために隣国を訪れたところから始まるラブロマンス。非常に王道な作品で好感度が高く、タイトルや台詞回しにもセンスが感じられた。しかしその反面、カクヨム連載の形式に従って単話ごとに要素を分散させた結果、展開に起伏をつけられていなかった面が惜しい。またヒーローとヒロインの視点が入れ替わりながら進むが、切り替わるペースが速く、恋愛として掘り下げてほしい部分があっさりと終わる物足りなさがあった。そのため、読者が置いていかれてしまい、「もっと知りたい」と思う欲求を上手く持たせられていない。自分にとって書きたいテーマを活かすための構造、見せ場を構築すると大きく印象が変わるだろう。


第17回角川ビーンズ小説大賞受賞作の2カ月連続刊行が決定!
各作品タイトルと刊行時期、イラストレーターを発表!

11月1日発売予定

『銀狼の姫神子 天にあらがえ、ひとたびの恋』
西嶋ひかり イラスト/サカノ景子

12月1日発売予定

『音風シンドローム 鳴らせ、運命のイントロダクション』
石川いな帆 イラスト/縞
『ルクトニア領繚乱記 猫かぶり殿下は護衛の少女を溺愛中』
さくら青嵐 イラスト/Laruha

さらに!

➀今年はカクヨムで投稿作と書籍の読み比べができる!
※詳細は公式ホームページで随時お知らせします。
②11月・12月新刊の各受賞作品をアニメイトでお買い上げいただくとSSペーパーがついてくる!
※特典はなくなり次第、終了となります。

今年の受賞作も要チェック!